ラブコメ 百人一首



八重むぐら 
しげれる宿のさびしきに 
人こそ見えね 
秋はきにけり

恵慶法師

訳

つる草がぼうぼうと茂っているこの寂しい宿に、
人は誰ひとりとして訪ねては来ないが、
やっぱり秋だけはやってきたのだなあ。

解説

この歌は「河原院」で催された「『荒れた宿に秋が来た』というテーマで歌を詠む会」で恵慶法師が詠んだ歌

「六条河原院」は、光源氏のモデルの一人とも言われている超一流貴族・源融(みなもとのとおる)が建てた大豪邸 

その超広大な庭には、名勝・陸奥国の塩釜の風景を模した「海」が造られ、毎月、海から海水を運んでは海の魚を飼い、塩田での製塩風景を再現するといった、ケタ外れの贅の尽くしよう 

いやはや、平安セレブのやることはスケールが違う

が、しかーし
融の死後、宇多天皇に寄贈されて天皇の別荘となったものの、出るんです、融の幽霊が…

宇多天皇と言えば、前に出てきた「女好き天皇サン」

例のお気に入り美女・京極御息所を連れて来て、まさにイチャイチャしてる最中に、融の幽霊が出てきて御息所に手を出そうとする… 

…幽霊にまでホレられるなんて、京極御息所、どんだけモテるねーん

そんなこんなで、超豪邸として有名だった河原院ですが、後には一転、「オバケ屋敷」として有名になり、荒れ果てる一方

この歌が詠まれた頃には、融の曾孫で歌人でもある安法法師が住み、時々風流人たちが集まっては、その荒廃ぶりを歌にする会などが催されていたんだとか

それにしても、心霊スポットで風流を感じるって、感性が鋭いんだか、鈍いんだか…

恵慶法師は播磨国分寺の講師(僧たちの監督)で、中古三十六歌仙の一人にも数えられている歌人です

ワンポイント文法

●「しげれ」は四段動詞の已然形

●「る」は完了の助動詞「り」の連体形。

●「に」は場所を示す格助詞。

●「人こそ見えね」の「ね」は、打ち消しの助動詞「ず」の已然形。

●「こそ〜ね」で逆接の意。

●「来にけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連体形

●「けり」は「今気がついた」という感動を表す助動詞。


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