ラブコメ 百人一首



筑波嶺(つくばね)の
峰よりおつるみなの川
恋ぞつもりて 
淵となりぬる
陽成院

訳

筑波山の峰から流れ落ちるみなの川が、つもりつもって深い淵となるように、あなたを思う私の恋も、ほのかな想いがつもりつもって、今では深い深い思いの淵となってしまったことだ。

解説

平安の色男として有名な在原業平から引き離された藤原高子は、18歳の時に9歳の清和天皇の元に嫁ぎます

年齢的にもアンバランスな上、スキャンダルにまみれた高子を強引に入内させた背景には、藤原氏の権力欲が見え見え

10年後に高子が皇子を産むや否や、藤原氏はその皇子を生後3カ月足らずで立太子させ、9歳で即位させますが、それがこの陽成天皇

9歳の子供に政治などできるわけもなく、その後ろで摂政として政治を操ったのが、高子の兄・藤原基経でした…

さて9歳で即位した陽成天皇、成長して自我が芽生えるに従って、自己主張を強め、次第に摂政・基経との間に亀裂が生まれ始めます

暴君だったとか精神病を患っていたとか言われており、果ては乳母の息子殺人事件の犯人説まで浮上し、それが元で17歳の時に半ばヤケクソ?気味に退位宣言

歴代天皇の中でも一・二を争うバットイメージの陽成さんですが、それまでの藤原氏の暗躍ぶりを見ていると、思い通りにならなくなっていった陽成帝を退位させるための、これまた藤原氏の陰謀ではないかとも言われてるそうな…

陽成天皇作として唯一伝わるこの歌は、彼の妃になった綏子内親王に贈ったもの 

奥様にこんな優しくも純粋な恋の歌を詠む男性からは、暴君っていうイメージってやっぱ沸いてこない
…ってわけで、個人的には藤原氏陰謀説に一票〜

ワンポイント文法

●「筑波嶺」は常陸国(今の茨城県)にある筑波山のことで、山頂が男体山と女体山の2つに分かれていることから、そこから流れる「水無乃川」は「男女川」とも書く。

●「筑波嶺の」から「みなの川」までが序詞。

●「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。

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